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VALUE INTERVIEW ~ヘルスケア業界の将来展望~

VALUE INTERVIEW 01

認知症患者の
幸せを追求して

ーCNS(中枢神経系)
領域治療の最前線

VALUE INTERVIEW ~ヘルスケア業界の将来展望~ VALUE INTERVIEW 01 認知症患者の幸せを追求して ーCNS(中枢神経系) 領域治療の最前線

VALUE INTERVIEWとは・・・

SSIがお届けするスペシャルインタビュー。医療・医薬品業界において、各分野をリードする専門家にお話をうかがい、いま医療の現場で何が求められているのか、どのような進化を遂げているのかお聞きします。医療機関の治験業務を支援するSMOだからこそ知ることができる業界最前線情報を対談形式でお伝えいたします。
第1回目は、認知症治療の第一人者である、片山内科クリニック 片山先生です。「人生100年時代」がすぐそこにある現在、2025年には5人に1人が認知症であると言われています。増加している認知症の治療や治験に第一線で携わる片山先生に、これまでのご経験と今後の想いについてお聞きします。

片山内科クリニック 院長 片山 禎夫 先生と SSI 代表取締役 三嶽秋久

数学青年が医学部へ進んだ理由

三嶽: 先生は認知症の権威でいらっしゃいますが、いつ頃から医師を目指されたのですか?

片山: 僕はもともと数学が大好きで、本当は数学者になりたかったのです。医学部に進むことを決めたのは大学進学のときでした。好きな数学を学ぶことで誰かの役に立てるなら、進むべき道には数学科、もしくは医学科という選択肢がありました。数学科なら多くの人が幸せになれるような仕事ができるかもしれない。そう思いましたが、僕にはそれを成し遂げるほどの自信はありませんでした。でも医者だとしたら、たった一人なら、幸せにすることができるかもしれない。それで、高校生だった僕は「一人の幸せ」の方を選んだのです。

三嶽: どのような医療に、数学のセンスを活かそうとお考えになったのですか?

片山: 当時、興味があったのは臭覚です。臭いの研究しようと思っていたのですが、臭覚は、脳の仕組みと切り離せない関係にあります。脳というのはとても重要でかつ難しい領域ですが、自分がどの分野の医者になろうか考えたとき、見えてきたのが脳だったんですね。脳のどの部分が音楽を楽しみ、どの部分が人に服を着せ、どの部分が色を認識し、どの部分が計算をしているのか、そういったことに意識が向き、脳の仕組みに関わる仕事がしたいと、神経内科の門を叩きました。数学そのものは使うことはないと思います。

三嶽: それで脳や認知症を解明しようと思ったのですか?

片山内科クリニック 院長 片山 禎夫 先生 Sadao Katayama 片山: いえ、脳の仕組みは本当に難しく、解明できるなどとは全く考えていませんでした。特に今から30年前の当時は、アルツハイマー病は何も分からない病気で、「あれだけには手をだすな」「アルツハイマー病の研究をする人は教授にはなれない」などと言われた時代。それでも私が進んだ大学院の教授の誘いで、アルツハイマー病の研究を始めてから2年後、アルツハイマー病の遺伝子であるアミロイドβが発見され、大きな話題となりました。世界で初めてそれを発表した国際会議に私も参加したのですが、有名な研究者たちが集結し、ワトソンとクリックがノーベル賞を受賞し、いよいよこれから遺伝子の時代がやってくるのだと、そのとき強く感じました。

患者さんを笑顔にするのは、薬だけではない

三嶽: それでも直接的に遺伝子研究に関わらなかったのは、そこに先生のポリシーがあるのですか?

片山: そうかもしれません。自分は遺伝子を知りたいとは思っていなかったのです。「この患者さんは、なぜ症状を呈して困っているのか」、その“なぜ”が知りたい。”なぜ”を追求することが僕の基本です。当時、アルツハイマー病の研究をしている先生はあまりいませんでしたので、とにかく勉強して、アルツハイマー病と思われる多くの患者さんを診ました。その頃、まだ原因が明らかにされていなかった神経難病、例えば筋萎縮性側索硬化症(ALS)やパーキンソン病の方も認知機能が低下する傾向にあり、認知症だけでも苦しいのに、手足までもが動かなくなり、二重も三重も苦しんでいる患者さんが多くいらっしゃいました。私と一緒に研究していた教授は薬での治療を試みており、大学では当時まだ珍しかったエラスターを導入し、助手もいないなかで、僕はカテコールアミンの治験を行っていました。医薬品開発をまさに体感しながら、治験に一生懸命取り組むことで、多くの患者さんを治せるかもしれない新薬の開発に僕たちが関与することができるんだと、実感したのです。僕自身が「薬を見つける」ことは難しくて、その点は申し訳なく思うのですが、僕の役割は患者さんが幸せになれる薬の開発過程で、その薬が効果的なのか、どんな症状が良くなってどんな副作用が起こりうるかをイメージングすることだと考えています。

片山内科クリニック 院長 片山 禎夫 先生とSSI 代表取締役 三嶽秋久

三嶽: 30年間で得られた経験と知識から、そういったマッピングが自然に見えてくるということでしょうか。

片山: そうですね、そして不思議なことに、薬だけでは良くならないという事実も顕われてくるのです。患者さんと家族の関係性や、患者さんを取り巻く環境など、生活の様々なファクターが患者さんに影響を与えていて、患者さんを笑顔にしたのが薬の効果なのか、他の要因なのかが大体分かってくるようになるのです。それは例えばプラセボと実薬の数値が、グラフ上で綺麗に分岐していくことからも分かります。それを受けて、製薬企業の皆さんにも喜んでもらいましたし、FDA(アメリカ食品医薬品局)の心理学グループと相談したりもしました。30年間の研究生活では、最初の頃こそ悩み苦しみましたが、患者さんの家族や周りの人たちと一緒に治療に励むことで、副作用をなるべく出さずに、最大限の治療効果を出せることが分かり、結果的に皆さんが協力してくれるようになりました。例えば5年間という長い期間を終えたあと初めて実薬をお渡しできるという試験があったのですが、途中で止める患者さんが多くいるなか、私の患者さんのほとんどが最後まで試験に協力してくれたり、薬の処方を受けにアメリカまで行かれたりしました。「患者さんの人生を良くしたい」―それを第一に考えて取り組むことで、治療や薬の効果を最大限まで引き出し、結果的に患者さんが喜んでくれる。それが治験に積極的に参加する理由です。

三嶽: 片山先生のクリニックの患者さんが治験に参加する割合は、全国的にみても非常に高いですが、その理由はここにあるのですね。

SSI 代表取締役 三嶽秋久 Akihisa Mitake

認知症の最善治療――
「失った機能の回復」と「残った機能の助長」

三嶽: 先生の考えるスーパードラッグとはどのようなものですか?安全性がまだ確立されていないけれども有効性が高い薬や、従来とは全く形状の異なる治療方法が生まれる可能性もありそうですが。

片山: そうですね、認知機能は脳の成熟とともに高まり、ある地点で落ちてくるわけですが、この認知機能の低下に作用しているアミロイドβが見つかったとき、同時にノンアミロイドコンポーネントというNAPと呼ばれていた物質の主成分αシヌクレインが見つかりました。このタンパク質も非常に重要なことが分かっています。その後もTdp43などのような新しいタンパク質も見つかってきました。僕がいま考えているのは、脳が発達し始める生後数年で“何か”が起きているということ。発達の過程で抑えられていた物質が、老化の段階で再び現れるーここに認知症根治に繋がるヒントが隠されているのではないかと考えている方々もいらっしゃいます。一つの症状の原因は、必ずしも一つとは限りません。クリニックでは、複合的な要素が絡んでいることを考慮しつつ、治療を行っています。

片山内科クリニック 院長 片山 禎夫 先生 Sadao Katayama SSI 代表取締役 三嶽秋久 Akihisa Mitake

そして最も大切なのは、患者さんが笑顔でいられること。自分の歩んできた人生を良かったと思える瞬間です。障害を受けた脳の機能を治療することも大切ですが、同時に、残っている脳の機能の補完を助ける治療もできたら良いと考えています。最初にも言いましたが、人間の脳は、ある部分が服を着せ、ある部分が色を認識し…というように、その機能を分けています。もし脳が最初から混沌として、いい加減な状態だったらどうでしょう。僕は、脳が少しくらい壊れてもいいじゃないか、もっと補完し合って色々なことができるかもしれない、そんな風に感じているのです。「失った機能を治す」「残った機能で一番良い状態を作る」この二つを融合させるのが最善の方法ではないかと考えていますが、それを示すには裏付けるエビデンスデータが必要です。現在と未来の治療のため、今は粛々と治験を実施しています。ただ思うのは、治験終了後の研究とフォローデータがあれば、なお良いということ。僕は、治験に参加してくれた患者さんのその後の治療にも携わっていますが、治験終了とともにフォローもなくなってしまうのは非常に残念なことです。

三嶽: おっしゃる通り、長期にわたる試験であっても、その期間が終了するとフォローも終わってしまいます。承認申請にかかわらず、本来なら患者さんのその後の変化を追い続けることが本当の医療貢献に繋がります。特にこの領域では、試験終了後の観察が重要ではないでしょうか。

片山: 本当にそう思います。長きにわたって治療・観察するのは非常に根気が要ることです。データを解析する時間や能力には限界がありますし、研究しやすい環境の大学とは違って、クリニックの医師が研究に貢献し続けることは簡単ではありません。研究内容や方法論など、恥ずかしいですが機会があれば公表し、全体的な医療の向上に繋げられることを望んでいます。

片山先生と弊社CRC

片山先生と弊社CRC

Profile

片山内科クリニック 院長 片山 禎夫 先生 Sadao Katayama

片山内科クリニック 院長 片山 禎夫 先生 Sadao Katayama

広島大学医学部卒業。広島大学医学部第三内科 助手、川崎医科大学神経内科 レジデント、広島大学脳神経内科・難病対策センター事務局長併任、独)国立病院機構 柳井病院神経内科医長・リハビリテーション科医長併任、独)国立病院機構 広島西医療センター臨床研究部長・認知機能疾患科医長併任、川崎医科大学神経内科学 特任准教授を経て、2015年に患者さんやそのご家族に笑顔になっていただくために、ふるさと倉敷で片山内科クリニックを開院。